コラム
- お役たち情報2026.10.22
- 【2027年1月施行】貸付不動産の「5年ルール」で相続税評価はどう変わるのか
2027年1月から、相続税評価のルールが変わります
――「相続直前にアパートを建てる」という対策は、通用しなくなります。
2027年(令和9年)1月1日以後の相続・贈与から、取得して5年以内の貸付用不動産は、これまでの路線価ベースではなく「時価(通常の取引価額)」で評価される。
2025年12月に公表された令和8年度税制改正大綱で示され、2026年9月には国税庁が評価方法を具体化する通達案を公表してパブリックコメントを実施しました。
いわゆる「貸付不動産5年ルール」です。
結論からお伝えすると、変わるのは「相続が近づいてから駆け込む」という発想そのものです。
これからの相続対策は、5年という時間をどう積み上げるかで結果が分かれます。
本コラムでは、大阪で土地活用をご検討中のオーナー様に向けて、制度の中身と実務のポイントを整理します。
1. 何が変わるのか|「路線価で半分」と言われた時代の終わり
これまで、現金で賃貸アパートを建築したり、収益マンションを購入したりすると、相続税の評価は次のように計算されてきました。
- 土地:路線価(貸家建付地として自用地より減額)
- 建物:固定資産税評価額
この組み合わせにより、相続税評価額は市場価格の4〜5割程度まで下がるケースもありました。現金を建物に替えることで課税ベースを圧縮する——長く「相続税対策の王道」とされてきた手法です。
新しいルールでは、対象となる貸付用不動産について、路線価方式・倍率方式・固定資産税評価額による評価をいったん外し、原則として「課税時期における通常の取引価額(=時価)」で評価します。
つまり、これまで当たり前だった「評価額が半分近くになる」という前提は、対象となる物件では成り立たなくなります。
2. 対象になるのは「2つだけ」|すべての賃貸物件が時価評価になるわけではありません
ここが最も誤解されやすいポイントです。新ルールの対象は、次の2つに限られます。
- 課税時期(相続開始日・贈与日)の前5年以内に取得または新築した貸付用不動産
- 不動産小口化商品(こちらは取得時期を問わず対象)
反対に、建築・取得から5年を超えて保有している賃貸不動産は、これまでどおり路線価等による評価が適用されます。
制度の全体像としては「5年以内の物件だけ評価方法を時価に近づける」という設計であり、賃貸経営そのものが否定されたわけではありません。
「80%で評価される」と覚えると、判断を誤ります
ネット上では「5年以内の物件は取得価額の80%で評価される」という説明をよく見かけますが、これは正確ではありません。
原則はあくまで時価であり、80%は「要件を満たしたときに選べる例外」です。
その要件は、取得価額が取得時の通常の取引価額に相当すると認められること。
さらに土地は地価変動率を乗じ、建物は償却費を差し引いたうえで80%を掛けます。
結果として、従来のような大きな圧縮効果は得られにくくなります。
実務では、この「原則」と「例外」のどちらで評価できるかで税額が変わります。
取得価額や契約内容の記録が重要になるのは、ここに理由があります。
3. 「5年ルール」が意味するもの|駆け込みではなく、時間の設計
制度を整理すると、シンプルな事実に行き着きます。
- 取得から5年以内に相続が発生すれば、新ルール(時価ベース)で評価される
- 取得から5年を超えて保有していれば、従来の評価が適用される
相続がいつ発生するかは、誰にもコントロールできません。
だからこそ、早く始めて保有年数を積んでおくことだけが、確実に効く対策になります。
逆に、体力や判断力に不安が出てきてから建てても、5年が経過する前に相続が発生すれば、新ルールの対象です。
「元気なうちに、少しでも早く」という当たり前の話が、制度上もっとも合理的になりました。
なお、建築から5年は、単に税制上の待ち時間ではありません。
賃貸経営にとっては、入居付け・家賃設定・修繕計画・返済計画が実際に機能するかを見極める期間でもあります。
この5年を収益を上げながら通過できる物件かどうかが、本来の意味での資産価値を決めます。
4. 大阪で土地活用を始める前に、確認しておきたい4つのこと
制度を理解したうえで、実際に建築を検討する段階では次の4点を確認してください。
① 立地と賃貸需要
同じ大阪市内でも、エリアによって賃貸需要の厚みは異なります。
最寄駅からの距離、沿線の乗換利便性、周辺の供給量、単身・ファミリーのどちらの需要が強いのか。
税制ありきではなく、10年後も借り手がいる立地かを起点にしてください。
② 事業性(利回り・返済・空室・修繕)
相続税評価は「下がる金額」ですが、経営は「毎年の手残り」です。
建築費の上昇局面では、想定利回りだけで判断せず、返済余力、空室率、修繕費、将来の大規模修繕まで含めた収支を確認する必要があります。
③ 5年後・10年後の出口
新ルールは「5年超の保有」を優遇する設計です。
であればこそ、建てた後の売却・建替え・相続までの道筋を最初に描いておくことが重要になります。
短期の節税目的だけの建築は、出口で行き詰まりやすくなります。
④ 建築費と金利の見通し
資材価格・人件費・金利の動向は、収支計画を大きく左右します。
契約前に、総事業費と借入条件を確定させたうえで、複数シナリオを試算しておきましょう。
5. よくあるご質問
Q. 2027年より前に建てたアパートは、すべて対象になりますか。
A. 相続開始日から5年を超えて保有していれば、従来どおりの評価です。ただし取得から5年以内であれば、2027年1月以後の相続では新ルールの対象となります。
Q. 「80%評価」を選べば、これまでと同じ効果が得られますか。
A. 得られません。80%は要件を満たす場合の例外的な計算方法であり、土地は地価変動率、建物は償却費の影響を受けます。従来のような大幅な評価減は見込みにくくなります。
Q. 不動産小口化商品はどうなりますか。
A. 取得時期を問わず対象となり、原則は時価評価です。一定の要件で元本等相当額の90%等による計算が認められるケースがありますが、商品ごとに条件が異なります。
Q. 2026年中に贈与すれば、新ルールは適用されませんか。
A. 適用は2027年(令和9年)1月1日以後の相続・遺贈・贈与です。ただし贈与には贈与税や不動産取得税など別の負担が生じます。単純に有利とは言えないため、必ず税理士にご相談ください。
Q. 5年待てば必ず節税になりますか。
A. 新ルールは「評価を時価に近づける」ものであり、節税を保証する制度ではありません。効果は物件の所在地、取得価額、市況、他の財産の構成によって変わります。個別の試算は税理士にご確認ください。
6. まとめ|税制が厳しくなるほど、「事業として成立する土地活用」が残る
今回の見直しは、相続税対策としての賃貸経営に終わりを告げるものではありません。
評価の圧縮効果は小さくなりますが、5年を超えて保有すれば従来の評価が使えるという構造は残ります。
だからこそ、これからの土地活用は次の順序で考えるべきです。
- 立地と賃貸需要を確認する
- 事業として手残りが出るかを試算する
- 5年・10年の保有を前提に、相続と出口の計画を立てる
- そのうえで、早い段階から着工する
弊社は大阪で土地活用・アパート建築を手がける住宅会社として、税制の最新動向を踏まえつつ、単なる節税ではなく「事業としてしっかり手残りを生み出す」ご提案を行っています。
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